10月17日(金)より全国ロードショー
イントロダクション

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世界に突きつける“キッズ”のリアル

写真集「タルサ」などティーンエイジャーのリアルな姿を撮り続けてきたラリー・クラーク。マーティン・スコセッシ、ガス・ヴァン・サント、フランシス・F・コッポラなど、多くの映画監督に影響を与えた写真家が満を持して1995年に発表した監督デビュー作『KIDS/キッズ』はSEX、ドラッグ、HIVとあまりにもリアルで生々しいティーンの姿をまるでドキュメンタリーのように映し出し、そのセンセーショナルな衝撃から全米で賛否両論を巻き起こした。当時のアメリカにはこれほどリアルなティーンエイジャー映画は存在せず、どれも真実とはほど遠いものだったのだ。ラリー・クラークは誰も作らなかった映画を作りたいという強い思いで、ティーンエイジャーの24時間をリアルに描き上げた。
脚本は当時19歳だったハーモニー・コリン。撮影は『マイ・プライベート・アイダホ』の名カメラマン、エリック・エドワーズが務め、そのショッキングな映像から「フィクションか現実か」という論争にまで発展。音楽はダイナソーJr.のベーシストであり、セバドーのボーカル&ギタリストのルー・バーロウ。そのほかダニエル・ジョンストンなども参加したサウンドトラックは映画とともに大ヒットした。製作総指揮にはガス・ヴァン・サントが名を連ねている。キャストは、俳優ではなく街中でラリー・クラークが知り合ったレオ・フィッツパトリック、ジャスティン・ピアース、ハロルド・ハンターといったスケーターを起用。もっとも重要なジェニーを演じた、クロエ・セヴィニーは当時演技未経験だったが、本作の出演によって時代のアイコンとなっていく。さらに、現在も女優として活躍しているロザリオ・ドーソンがルビー役を演じた。
90年代のティーンエイジャーの現実を突きつけ、多くのクリエイターに影響を与えるなど、今もなお熱烈なファンを増やし続ける『KIDS/キッズ』。製作からちょうど30年の時を経て、スクリーンで観る者に新たな衝撃を与える。

ストーリー

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世界に突きつける“キッズ”のリアル

ニューヨーク、夏のある暑い日の午後。テリーはいつものようにバージンの女の子をモノにして、親友のキャスパーに自慢しながら、街をブラつき、仲間がたむろしているポールの家へ向かう。くすねたビールを飲み、ドラッグを決め、SEXの話で盛り上がる。一方、ルビーの家ではジェニーたち女の子5人もSEXの話ばかり。経験豊富で無防備なSEXを楽しむルビーは自分の体験談をネタに盛り上げる。ジェニーはバージンを奪い、その後は連絡もしてこないテリーを許せない。HIV感染を心配するルビーはジェニーと検査結果を聞きにいく。テリーとのSEXしか経験のないジェニーはルビーについてきて検査を受けただけだった。しかし検査結果はルビーはネガティブだが、ジェニーはポジティブだった。たった1回、1人の男とのSEXのために突然の死の宣告をされてしまったジェニー。とにかくテリーを見つけなければいけない。会って、このことを伝えなければ。しかし、テリーは新たなバージンの子を誘い出し、仲間たちと夜のプールではしゃいでいる。自分自身がHIVキャリアとも知らずに。

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監督:ラリー・クラーク

1943年1月19日アメリカ オクラホマ州タルサ生まれ。写真家、映画監督。
子供の撮影が専門の写真家であった母の仕事を13歳で手伝い始め、1971年に未成年の薬物依存や性行為、パンクやスケートボードといったサブカルチャーを撮り下ろした写真集『タルサ』を発表し、世界に衝撃を与えた。その後12年のブランクを経て1983年に写真集「ティーンエイジ・ラスト」を出版し、活動を再開。以降も一貫して行き場のない欲望に身を任せるティーンエイジャーを共感溢れる視点から撮影した作品を発表している。
1995年に『KIDS/キッズ』で映画監督デビュー。薬物・性・暴力にまみれたNYのストリート・キッズの日常をドキュメンタリーのようにリアルに描写し、物議を醸した。脚本は当時19歳だったハーモニー・コリン。撮影は『マイ・プライベート・アイダホ』のエリック・アラン・エドワーズ。その後も『アナザー・デイ・イン・パラダイス』(98)、『BULLY ブリー』(01)、『ケン・パーク』(02)、『ワサップ!』(05)の監督を務めた。2012年に7年ぶりに『マルファ・ガールズ』を発表。自身のウェブサイトから直接配信し、第7回ローマ映画祭の最高賞「金のマルクス・アウレリウス賞」を受賞した。

製作総指揮:ガス・ヴァン・サント

1952年7月24日アメリカ ケンタッキー州ルイビル生まれ。映画監督。
大学を卒業して広告業界で働いた後、1985年『マラノーチェ』で長編監督デビューを果たす。1989年にはマット・ディロン主演で『ドラッグストア・カウボーイ』を発表し、全米各地の映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞など様々な映画賞を受賞し、高い評価を受ける。続く『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)では主演のリヴァー・フェニックスがヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞。この3作品が「ポートランド3部作」として自身の原点となる。ハリウッドでも活動を始めて1997年に公開されたマット・デイモンとベン・アフレック主演・脚本の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、アカデミー賞で作品賞や監督賞をはじめ9部門にノミネートされ、ロビン・ウィリアムズがアカデミー助演男優賞に輝いた。コロンバイン高校の銃乱射事件にインスパイアされた『エレファント』(03)はカンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞。政治家ハーベイ・ミルクの伝記『ミルク』(08)で主演を務めたショーン・ペンはアカデミー主演男優賞を受賞し、脚本賞にも輝いた。それ以降も加瀬亮が出演した『永遠の僕たち』(11)、マット・デイモンが主演・製作・脚本を務めた 『プロミスト・ランド』(14)、マシュー・マコノヒー、渡辺謙主演の『追憶の森』(16)、ホアキン・フェニックス主演で漫画家ジョン・キャラハンの伝記を映画化した『ドント・ウォーリー』(18)と監督作品を発表している。

脚本:ハーモニー・コリン

1973年1月4日アメリカ カリフォルニア州生まれ。映画監督、脚本家、作家。
父親はドキュメンタリー映画作家。米カリフォルニア州生まれだが、幼いころは家族とともにナッシュビルやテネシー、ニューヨークと東海岸を転々として育つ。ラリー・クラークと出会い、19歳で書き上げた『KIDS/キッズ』の脚本が1995年に映画化され、高い評価を得た。1997年に自ら脚本を書いた『GUMMO ガンモ』で監督デビューし、ヴェネツィア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。以降の監督作に『ジュリアン』(99)、『ミスター・ロンリー』(07)、『スプリング・ブレイカーズ』(12)、マシュー・マコノヒー主演作『ビーチ・バム まじめに不真面目』(19)などがある。

音楽:ルー・バーロウ

1966年7月17日アメリカ オハイオ州 デイトン生まれ。
アメリカン・オルタナティブ・ロックの核をなしたバンド、ダイナソーJrのベーシストであり、ローファイ・インディ・ロックの象徴、セバドーのボーカル兼ギタリスト。ダイナソーJrを3作目のアルバムのリリース後に脱退。セバドーとして活動を開始。90年代初頭にローファイ・シーンを確立した。2005年にダイナソーJrに復帰し、アルバムを発表しツアーを敢行。現在もダイナソーJr、セバドー、フォーク・インプロージョン、ソロとして精力的に活動している。

音楽:ジョン・デイヴィス

ルー・バーロウのフォーク・インプロージョンでのパートナー。彼自身も成功したローファイ・ソロ・パフォーマーであり、パレス・ブラザーズの元メンバー。12歳でギターを始め、セバドーに影響を受けて、1988年に自身のアコースティック・ホームレコーディングの編集を開始し、最初のテープをルー・バーロウに送り、同年、フォーク・インプロージョンとしてチームを組んだ。1994年に「テイク・ア・ルック・インサイド・ザ・フォーク・インプロージョン」を発表している。

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レオ・フィッツパトリック

レオ・フィッツパトリック

アメリカ ニュージャージー州 モントクレア生まれ。
写真家であったラリー・クラークとスケートボードを通して親交を持ち、映画監督デビュー作『KIDS/キッズ』に出演した。その反響は大きく、"ヴァージン・キラー"テリーを役ではなく、レオと同一視する人々が多くいて悩まされたが、その後もラリー・クラーク監督作『アナザー・デイ・イン・パラダイス』(98)、『BULLY ブリー』(01)にも出演している。2000年以降はテレビドラマを中心に俳優として活動しており、「GOTHAM/ゴッサム」などに出演した。

ジャスティン・ピアース

ジャスティン・ピアース

イギリス ロンドン生まれ。
ニューヨークで育ち、ワシントンスクエアパークでスケートボードをしていたところ、ラリー・クラークにスカウトされ、『KIDS/キッズ』にテリーの友人のスケートボーダー、キャスパー役で出演し、インディペンデント・スピリット賞最優秀新人賞を受賞した。Supreme スケートクルーのオリジナルメンバー。ハロルド・ハンターとともに「The Zoo York Mixtape」(98)にも出演している。『KIDS/キッズ』の出演がきっかけで多くの映画に出演したが、2000年、25歳という若さで自らの命を絶った。

クロエ・セヴィニー

クロエ・セヴィニー

アメリカ マサチューセッツ州スプリングフィールド生まれ。
ラリー・クラークにスカウトされ、もっとも重要なジェニー役に決まったのは、撮影開始の3日前だった。当時モデルとして活動していたが、演技は未経験だった。本作の出演によって時代のアイコンとなり、その後、人気ブランド「MIU MIU」のイメージガールも務めた。ヒラリー・スワンク演じるトランスジェンダーの主人公と恋に落ちる役を演じた『ボーイズ・ドント・クライ』(99)ではアカデミー助演女優賞の候補となり、全米映画批評家協会賞助演女優賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞助演女優賞などを受賞した。2006年放送開始のテレビシリーズ「ビッグ・ラブ」では、ゴールデングローブ賞助演女優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)を受賞している。その他出演映画に『アメリカン・サイコ』(00)、『ブラウン・バニー』(03)、『ラヴレース』(13)、『荒野にて』(17)などがある。

ロザリオ・ドーソン

ロザリオ・ドーソン

アメリカ ニューヨーク生まれ。
家の前のポーチに座っていたところをスカウトされて、『KIDS/キッズ』のルビー役を掴む。その演技は高い評価を得た。その後、本格的に演劇を学び、スパイク・リー監督作品をはじめ、多くのインディペンデント作品に出演。シリアルな役もコメディもこなし、ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『RENT レント』(05)では見事な歌声を披露するなど、現在では、インディペンデント作品から大作まで幅広く出演している。主な出演作は『メン・イン・ブラック2』(02)、『ニュースの天才』(03)、『アレキサンダー』(04)、『シン・シティ』(05)、『7つの贈り物』(08)、『アンストッパブル』(10)、『トランス』(13)、『シン・シティ 復讐の女神』(14)、『ゾンビランド ダブルタップ』(19)、『ホーンテッドマンション』(23)など。Webドラマ「GEMINI DIVISION ジェミナイ・ディビジョン」(08)は製作総指揮と主演を兼ねた。

ハロルド・ハンター

ハロルド・ハンター

アメリカ ニューヨーク生まれ。スケートボーダー。
90年代のニューヨークのストリートスケートを語る上で欠かすことができない存在。Zoo Yorkの中心メンバーであり、出演した「The Zoo York Mixtape」(98)は伝説の映像となっている。『KIDS/キッズ』にはハロルド役で出演し、強烈なインパクトを与えた。
2006年2月17日、ローワー・イースト・サイドのアパートでコカインによる心臓発作で死亡しているのが発見された。その後、彼の死を偲んでハロルド・ハンター財団が設立され、ニューヨークをはじめ世界のスケートボーダーたちがスケートボーダーとして、また人として、その可能性を最大限に発揮できるように支援している。